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大阪地方裁判所 昭和46年(ワ)3682号 判決 1974年2月01日

原告 大平信用組合

被告 延原廣助 外四名

主文

一、被告延原広助は、原告に対し金一、二五〇万円及びこれに対する昭和四五年九月一日から支払ずみまで年六分の割合による金員を支払え。

二、原告の被告安田一女、同開昌恵、同安間充江、同安田育代に対する請求を棄却する。

三、訴訟費用は、原告と被告延原広助との間に生じたものは全部被告延原の負担とし、原告とその余の被告らとの間に生じたものはその二分の一を原告の負担、その余を各自の負担とする。

四、この判決は、第一項にかぎり仮に執行することができる。

事実

第一、当事者の申立

(原告)

一、主文第一項同旨

二、原告に対し、被告安田一女は金四一六万六、六六六円、同開昌恵、同安間充江、同安田育代は各金二七七万七、七七七円及び右各金員に対する昭和四五年四月二六日から支払ずみまで日歩金七銭の割合による金員を支払え。

三、訴訟費用は被告らの負担とする。

との判決並びに仮執行の宣言を求める。

(被告ら(被告延原を除く))

一、原告の請求を棄却する。

二、訴訟費用は原告の負担とする。

との判決を求める。

第二、当事者の主張

(請求の原因)

一、原告は、昭和四二年四月九日および同年四月二五日、訴外(分離前の共同被告)株式会社松本工務店(以下「訴外会社」という)との間で手形割引等の取引契約を結び、訴外会社は、原告が訴外会社のために割引した手形の支払が拒絶されたときは、訴外会社が直ちに買い戻すこと、買戻の履行を一回でも怠つたときは割引手形全部について期限の利益を失い全割引手形についてその額面金額及びこれに対する右買戻の履行を怠つた手形の支払期日の翌日以降金一〇〇円につき一日金七銭の割合による遅延損害金を原告に支払うことを約した。

二、訴外(亡)安田正雄(以下「訴外安田」という)は、昭和四二年四月二五日、前項契約に基づく訴外会社の債務を連帯保証することを原告に約した。

三、被告延原広助は、訴外会社あてに別紙目録記載一記載のとおり約束手形八通(額面合計金一、二五〇万円)を振り出し交付した。原告は、訴外会社から右各手形の裏書譲渡を受け、これを第一項の約旨に基づいて訴外会社のために割引した(割引日は別紙目録二記載のとおり)後、これを支払をうけるために支払期日に支払場所に呈示したが、何れも支払を拒絶され、現にこれを所持している。しかるに、訴外会社は前述約旨に基づく買戻の履行をしなかつたので、別紙目録記載1の手形の満期日の翌日である昭和四五年四月二六日以降全割引手形の買戻義務の履行について期限の利益を失つた。

四、訴外安田は、昭和四六年三月死亡し、同人の右債務を妻である安田一女は三分の一(金四一六万六、六六六円)その子である開昌恵、同安間充江、同安田育代は各九分の二(金二七七万七、七七七円)を相続した。

五、よつて、原告に対し、被告延原は、手形債権の履行として、手形額面合計金一、二五〇万円およびこれに対する最終手形(別紙目録記載8)の満期日の翌日(昭和四五年九月一日)から支払ずみまで手形法所定年六分の割合による利息金の、連帯保証債務の履行として被告安田一女は金四一六万六、六六六円、同開昌恵、同安間充江、同安田育代は、各金二七七万七、七七七円及び各金員に対する期限喪失後の履行期の翌日である昭和四五年四月二六日以降支払ずみまで金一〇〇円につき一日金七銭の割合による約定遅延損害金の各支払いを求める。

(請求の原因に対する被告ら(被告延原を除く)の答弁)

一、請求原因事実中一および三は不知、同二は否認する。同四は、原告主張の日に訴外安田正雄が死亡し、同日、その権利義務を被告らが、妻や子としてその主張のような割合で相続したことは認めるが、その余は否認する。

二、被告らの主張

(一)、甲第二号証の二(取引約定書)の連帯保証人欄には訴外安田の住所及び氏名の記名並びにその名下に押印があるが、これは、訴外安田の意思に基づいてなされたものではなく、明らかに何人かに冒用されたものである。すなわち、訴外安田は、生前記名印を使用する習慣はなく、日常生活では、毛筆、仕事においては、ペンを常用し、本件の如き契約書には常に手書で署名していたからである。右書面の印影は、確かに同人の印鑑によるものであるが、その印鑑は、同人が訴外会社に勤務中は常に同人の使用する机の引出しの中に保管されていたので、何人かがこれを冒用することは必ずしも困難でなかつたからである。

(二)、仮に、訴外安田が、右契約書に、その意思に基づいて記名押印し、これにより連帯保証人となつたとしても、右契約書では、保証すべき取引の内容、保証期間および保証金額について限定なくいわゆる「包括根保証」であるから、公平の観念や信義則の見地又は当事者の意思の合理的解釈等から制限を加え、保証人の責任を合理的な範囲に限定せらるべきである。この観点からすれば、右連帯保証の効力は、次に述べるとおり昭和四二年一二月か遅くとも昭和四三年一二月には消滅している。

1、訴外安田は、昭和四一年三月、訴外会社に入社し昭和四二年三月頃から訴外会社の計理関係事務を担当していたが、肺結核再発により同年一〇月頃から出勤しなくなり、同年一二月、同人に代つて訴外会社の新たな計理担当者として訴外(分離前の共同被告)岡本こと李桂三(以下「訴外岡本」という)が就任した(訴外安田の事務を引継いだ)。訴外安田が前述連帯保証人となつたのは、同人が訴外会社の従業員をして計理関係事務の担当者という地位に基づくものであるから、同人が右の地位から離脱した時点で、同人の連帯保証債務は当然に消滅したものと解すべきである。けだし、訴外会社の如き小規模かつ個人的色彩の濃厚な会社が原告の如き信用組合と取引契約をなす場合には、計理担当者が連帯保証人として契約書に署名・押印を要求されるのは常識であり、これを要求された計理担当者が従業員たる地位にある以上拒絶できないのも極く当然であり、こうした取引実体の中では、計理担当者が連帯保証人となるのは「計理担当者であるから」つまり「計理担当者である期間につき」責任を負う趣旨であり、この点原告も当然諒解して計理担当者に連帯保証人となることを要求したと解釈するのが当事者の合理的意思に合致するからである。

2、訴外国本は、前述計理事務引継をうけた後、昭和四三年四月九日、原告と訴外会社との間の取引契約及び手形取引契約の連帯保証人となつたから、この時点で訴外安田の連帯保証債務は消滅した。すなわち訴外安田と訴外国本との連帯保証契約書とを対比した場合、連帯保証人の一人が訴外安田から訴外国本にかわつている以外は、内容に全くかわりがない。後者の重要性は、新たに訴外会社の計理担当者が訴外国本になつたという点にある。後者の契約が締結されるに至つたのは、訴外国本が、原告に対し、昭和四二年一二月、経理担当者が交替したことを連絡したからに他ならない。そしてこの連絡は、訴外国本が、原告に対し、訴外安田が経理担当者の地位を離脱したことを通知すると共に、訴外安田の代理人として訴外安田の本件連帯保証契約の解約の告知をなしたことの二面の意義を有するものである。だからこそ、原告は訴外安田との契約後一年にもならないうちに訴外国本との同内容の契約をしたのである。

3、訴外安田は、昭和四三年一二月六日訴外会社を解雇され、同日、訴外会社とは無関係となつたので、本件保証債務は消滅した。すなわち、訴外安田は、訴外会社の従業員の地位にあることを前提として本件保証契約をしたが、これを喪失した。また、保証人の地位を離脱するためには、いかなる場合においても債権者に対する解約の告知を必要とすると考えるのは妥当でなく、本件の場合、訴外安田が肺結核再発により危篤の状態にあり、同人の健康状態・勤務状態が悪化したことにつき訴外国本から報告をうけ、原告は、その実情を熟知していたのに、保証意思の確認を怠つていたのであるから、少くとも訴外安田の退職時には、右保証契約を解除するであろうことは当然予想していたと解するのが合理的であり、かかる場合には保証人の明示の解約の告知は不必要であると解するのが公平の観念に合致する。

(三)1、仮に、本件保証債務の効力が消滅していないとしても、同保証債務の極度保証額は金五〇〇万円であり、この範囲内で被告らが履行義務を負うにすぎない。すなわち、訴外国本の本件保証契約書には、保証債務の元本極度額が金二、〇〇〇万円とされているのに、訴外安田の本件保証契約書には何ら規定されていない。ところが、訴外安田の右昭和四二年二月二五日付手形貸付等の取引契約と同一表示の契約について、原告のために、訴外会社所有の土地登記簿謄本(乙第一号証)、同建物登記簿謄本(乙第二号証)には、債権元本極度額を金五〇〇万円とする根抵当権の設定の登記の記載があるから、これによれば、訴外安田の本件保証の極度額も金五〇〇万円であると推認するのが相当である。

2、原告は、前示物件に対する根抵当権について昭和四五年一月二三日大阪地方裁判所へ競売手続開始を原因とする任意競売申立(登記)をしているから、本訴弁論終結時点までには競落され、原告が競売代金を取得することができるので、これを民法四八八条の規定に基づいて本件保証債務(前示極度額金五〇〇万円)に充当すると訴外安田の保証債務は消滅する。

(被告らの主張に対する原告の応答)

一、被告らの主張事実(一)および(三)は否認する。同(二)は争う

二(一)、原告は、本件保証について、事前に、原告方従業員をして訴外安田の信用調査をし、同人の保証意思を確認している。

(二)1、被告らは、本件保証契約は「包括根保証」であると主張するけれども、手形取引契約書(甲第三号証)に明らかなように、保証極度額は金二、〇〇〇万円であつて、その責任の限度は定められている。この保証責任が、訴外安田が経理担当者を離脱したことによつて免責されるべきいわれはない。

2、被告らは、昭和四三年四月九日、訴外国本が保証人として新規加入したことによつて訴外安田の保証債務が消滅したと主張するけれども、訴外国本との保証契約(甲第二号証の二)は、当時、原告に対し訴外会社から資金借り増しの申し入れがあつたため、保証強化の意味で保証人を追加させたものであり、訴外安田の保証には何らの影響がない。

第三、証拠<省略>

理由

一、原告の被告延原に対する請求について

原告の被告延原に対する請求原因事実は、証人金斗仲の証言および弁論の全趣旨によつて真正に成立したことが認められる甲第一号証の一ないし八、および同証言を綜合してこれを認めることができ、他にこの認定を左右する証拠はない。そして右事実によれば、原告の同被告に対する請求は理由がある。

二、原告のその余の被告らに対する請求について

(一)、訴外安田が原告主張の日時に死亡し、同日、同人の権利義務を被告らが妻や子として原告主張のような相続分の割合で承継したことは当事者間に争いがない。

(二)  争いのある請求原因事実一(原告と訴外会社との手形取引契約)、同二(訴外安田の連帯保証契約)、同三(原告による訴外会社のための手形割引とその不渡)は、証人金斗仲の証言によつていずれも真正に成立したことが認められる甲第二号証の一ないし三、第三号証、前顕第一号証の一ないし八、同人の証言および弁論の全趣旨を綜合してこれを認めることができる(但し、訴外安田の保証の効力の及ぶ時的範囲については後に説示するとおりである。また、原告と訴外会社の手形割引等の取引契約日は、昭和四二年四月二五日、別紙目録二記載8の手形の割引日は昭和四五年三月二五日である。)そして右各証拠によれば、訴外安田は、原告主張の訴外会社の手形取引契約に基づく債務を、その極度額金二、〇〇〇万円について連帯保証したことが認められる。被告らは、その主張のような事由によつて、訴外安田の右保証期間は限定されていたから、本件債務発生前に、右保証契約は期間経過によつて効力を失つたとの趣旨の主張をする(原告はこれを争う)ので、以下右保証の効力について検討する。

1、証人岩本義宣の証言によつていずれも真正に成立したことが認められる甲第五、六号証、証人金斗仲の証言によつていずれも真正に成立したことが認められる乙第三号証の一一ないし一四、前顕甲第二号証の一ないし三、第三号証、右岩本および金の各証言および被告安田一女本人の尋問の結果ならびに弁論の全趣旨を綜合すると次の事実を認めることができ、この認定を左右する証拠はない。

(1) 、訴外会社は、昭和四二年当時の年間工事額は約三億円、大阪二部市場上場の株式会社岡組との取引関係があり、その頃、訴外会社代表取締役金斗仲は、原告信用組合茨木支店長岸本から訴外会社が右岡組から受取る手形を割引かせて欲しいとの申入れをうけ、原告と本件手形割引等の取引契約を結ぶに至つたこと。

(2) 、その折、右金斗仲は右岸本から形式的に、世帯持の保証人二人を入れて欲しいといわれ、昭和四一年頃訴外会社に入社し、その頃訴外会社の総務関係の事務を担当していた訴外安田を保証人に立てたが、その頃(昭和四二年一月から)の同人の給料は、一カ月につき基本給は四万円、多い時の名目受給総額は約金四万三、〇〇〇円、平均手取額は、約金三万六、〇〇〇円で、家族五人を養つていたこと。原告(組合)職員岩本義宣は、調査事務を担当し、昭和四二年四月頃、原告のために訴外安田について信用調査をし、その書類(甲第六号証)を作成したが、右調査書は訴外会社に勤務中の訴外安田を訪ね、同人の述べるとおりのことを記入したにすぎず、別途に信用調査をしたものでないこと。

同記入事項には、勤務先を訴外会社としながら給料月金五万円、入社時期を昭和三六年(勤務年数六年)とするなど事実とはかなり懸隔のある内容となつていること。訴外金斗仲は、本件保証が形式的である旨を原告からいわれていることを訴外安田にも伝えたこと。

(3)  訴外安田は、昭和四二年一〇月頃から肺結核再発により、訴外会社への出勤をやめ、昭和四三年一二月六日解雇されたこと。昭和四二年一二月、訴外安田の訴外会社における担当事務を訴外国本が処理することになり、同人は、その頃、訴外会社は、前記岡組から受取つていた手形が不渡りとなり、その決済のため、原告から融資をうけた際、従前の取引契約の際に訴外会社のために提供していた金斗仲所有の不動産の担保極度額を増額修正したのに伴い、新しく契約をやり直して欲しいと原告(岸本)から言われ、昭和四三年四月九日、原告と訴外会社との間の取引契約等の連帯保証人となつたが、その契約の内容は、保証極度額を金二、〇〇〇万円とし、担保証人を金斗仲とする。訴外安田の本件契約と全く差のない内容のものであつたこと。右金斗仲は、訴外国本を連帯保証人に立てる際、前示原告組合茨木支店長岸本に対し、訴外安田が、訴外会社を欠勤中であり、引続いて保証人になれないと述べ、その事情を話したこと。

2、以上「前項」の事実を前提として、訴外安田のした保証契約の時期的範囲について検討するに、

本件契約の動機ないし目的・当事者の地位その他の事情を総合すると、当裁判所は、その効力は、遅くとも訴外安田が訴外会社の従業員の地位を失つた時点(退職時)以降に生じた訴外会社の債務については及ばないものと認めるのが相当であると思料する。換言すれば、訴外安田の保証は、少くとも訴外安田が従業員として勤務中訴外会社に生じた債務についてのみ(その極度額の範囲においてのみ)その効力が及ぶに過ぎないものと考える

が、その理由の詳細は次のとおりである。

(1) 、金融機関との銀行取引の締結に際し、法人組織の中小企業については、代表者・取締役等の経営者個人の関係においてのみならず、従業員の関係においても保証(連帯)の締結を求められることが間々ある(本件はその一例である)。

かかる場合、代表者・取締役等の経営者については兎も角、企業の経営と全く関係のない、またはこれについて責任のない従業員において企業の負担すべき債務についてこれを保証すべきいわれは、本来法律的には勿論、道義的にもない筈である。

従つて、かかる立場の従業員に対し企業の債務について保証を求めること自体(特別の事情のないかぎり)本来、従業員の保護の見地に立てば、十分に合理的なものでなく、したがつてかかる立場の従業員が企業の債務についてした保証の意思表示については(それは無効といえないにしても)、慎重にその範囲を解釈する必要がある。

イ、企業の経営と無関係または責任のない従業員が経営と(または経営責任と)密接な関係のある企業の債務について保証するのは(特別の事情のないかぎり)、ただ、当該企業に勤務し、その勤務によつて給料を得、その生活資料を得ていて、これにより生活関係を円満に維持したいためだけであるといつてよい。

ロ、したがつて、かかる立場の従業員がする保証はその企業にかかわりのある期間、すなわち、その勤務中の期間に企業に生じた分についてのみ責任を負うとする意思で、企業の債務を保証するにとどまるとみるのが合理的であり、それは社会常識にも合致するものといえる。これを超える部分の企業の債務についてまでも保証するいわれはなくしたがつて、そのような保証の意思まであつたということは容易に認めがたいからである。

ハ、本件のように、保証債務の限度(極度額)が定められていたときには、その限度内においては、従業員の退職後の分にも保証の効力が及ぶとする見解があるかも知れないが、このような見解も当裁判所は採ることができない。けだし、特別の事情のないかぎり、かかる立場の従業員の合理的意思として、退職後に生じた、自己の勤務関係とは全く無縁なものまで、保証責任を負担すべき十分な理由がないからである。

ニ、そして、前記認定の事実によれば、訴外安田は訴外会社の経営と全く関係がなく、また、責任のない従業員であり、かかることは、訴外安田に保証を求めた原告においても十分了知していたことは明らかであるから、訴外安田のした本件保証は、退職時以降に生じた訴外会社の債務には及ばないというべきである。

(2) 、特に本件においては、前示認定の事実によれば、原告は、訴外会社の経営に対し高い信頼を寄せ、求めて本件取引を始めたもので、訴外安田の保証には、その実質面に重きをおかず、契約上の形式を越える意味合いに比重をおいていたものであり、しかも、訴外安田が訴外会社の従業員期間中に、他の世帯等の従業員を保証人の地位に加えた(これが直ちに訴外安田の保証人としての責任を免責したものとは断じがたいが)ことからも、右のようなことはますます推認できる。

また、本件極度額についても、訴外安田が保証極度額金二、〇〇〇万円の全額について責任を果さねばならなくなつた場合、仮に前記信用調書(甲第六号証)記載のある訴外安田の不動産評価額金一五〇万円、貯金八〇万円(このとおりであるか否かわ疑わしいが)を支払いに充当し、その余の金員の支払いに訴外会社から得られた給料金額(これを右調査書記載どおりの月五万円として)を充当したとしても三〇年余を要し、その担保能力からみるかぎり、訴外安田にとつては、右極度額は定められない(無制限)に等しいことは、右認定の正しいことを裏付けるものといえる。

(三)、以上認定したところによれば、訴外安田の保証は、遅くとも昭和四三年一二月六日、同人が訴外会社の従業員の地位を失つた時点以降の訴外会社に生じた債務については効力が及ばないところ、原告の被告らに対する本訴請求は、同日以後の日である昭和四四年一一月二一日以降の被告延原の振出交付にかかる訴外会社の割引手形(別紙目録一の手形八通)の買戻義務の履行に関するものであつて、訴外安田の訴外会社の債務についての保証の効力が及ばないものであることは明らかであるから、原告の被告延原を除くその余の被告らに対する本訴請求は、他に判断を加えるまでもなく理由がないというべきである。

三、以上のとおり、原告の被告延原に対する本訴請求は理由があるからこれを認容するが、原告のその余の被告らに対する請求は、何れも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担、仮執行の宣言については、民訴法八九条、九二条、一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 奈良次郎 喜田芳文 松村雅司)

別紙 目録一<省略>

別紙 目録二

別紙目録一手形番号 割引(裏書)日

1     昭和四四年一一月二五日

2     昭和四五年 一月二三日

3     同年    一月二六日

4     昭和四四年一二月二六日

5     同年   一二月二六日

6     昭和四五年 二月二〇日

7     同年    三月二五日

8     同年    八月二五日

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